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プロセス・テクノロジー

以前、『Φ型人間』というブログで暗黙知と形式知について触れました。

今回は私がそのようなキャリアビジョンを持つひとつの『きっかけ』となったエピソードを記します。

タイトルの『プロセス・テクノロジー』(インクス流)株式会社インクスで研究開発されたものです。

この会社のことを知ったのは就職活動中でした。

「ベンチャーオブザイヤー2002未上場企業部門第1位」「日本イノベータ大賞優秀賞」を受賞、
代表取締役社長の山田眞次郎氏は総理大臣主催「ものづくり懇談会」委員を務めています。
私の知っている情報では携帯電話の金型製造シェアがトップクラスということと、
金型製造のコンサルティングを行っているということくらいでした。

しかし、「百聞は一見に如かず」まさに諺のとおりになりました。

従来45日かかっていた携帯電話の金型製作工程を設計から金型まで、
一気通貫でわずか45時間にまで短縮し、実に24倍の生産性を向上を実現した。


製造業の工程を爆発的に短縮するための技術が『プロセス・テクノロジー』なのです。

このプロセス・テクノロジーの核は「プロセスの本質と本質的短縮」の概念です。
これは、
実態の把握→
本当に意味のある部分の抽出→
無駄の排除(方法検討、実施)→
本質部分の本質的短縮

を極限まで突き詰めるということです。

工程作業分析では「設計」「加工」「成形」という工程から、
「見る」「手を動かす」「ものを取る」「持ってくる」…などのさらに細かい作業に分解して、
それらを積み上げることで理論的にどれだけの時間を要するのかを算出します。

これは作業だけの積み重ねですが、人間の脳の情報処理やマシンネットワークなどすべてを、
細かい『作業』に分解するという考え方が可能です。

プロセス・テクノロジーは、「人の判断」を基準として工程を細分化する際の単位を決定します。

ここでは、判断を「未知のパラメータを人間が設定する思考」と定義しています。
すなわち、既知のパラメータを使って設定できるような思考は、判断とは定義しません。

この定義のもと、工程を分類すると

(1)判断を伴う工程
 未定の事項(設計値など)を決定する工程
 工程上の「Go」と「No-Go」の判断を行う工程

(2)判断を伴わない工程
 与えられた情報をもとに、手順に従って行えば誰にでもできる工程


となります。


通常、ここまで工程を細分化し「判断」と「作業」にまで分解すると、
全工程の80%以上が作業工程(判断を伴わない工程)という位置づけとなるそうです。

そして、ここからがプロセス・テクノロジーの真髄であり、私が最も影響された部分です。

それは、現状の工程では作業担当者がその複雑な手順ゆえに
“自分が決定した”と思い込んでいる工程も、
実際には既知の情報やルールに従って計算すれば答えを求められるということです。


つまり、熟練者が暗黙知に基づいて多くの判断を行いながら実施している工程も、
非熟練者でも実施できる工程に置き換えられることができるのです。
熟練者がどのようなロジックで判断しているのか、
そこを明らかにすることでプログラム(形式知)を書くことが可能になります。


インクスでプロセス・テクノロジーを開発するにあたりこんなエピソードがあったそうです。

金型職人の『神業』を見て、聞いて、触って、計り、書き取り、徹底的な分析を行った。
すべての脳の判断、目の動き、手の動き、指の動き一つひとつを作業軸と時間軸に位置づけ、
それらの意味づけを行っていった。
職人が溝を掘る。
紙やすりを使ってそのスライドを指で丁寧に磨いていく。
「どうして磨いているんですか?」
「間にうまく入らないからだよ」
職人はスライドをしばらく磨き、溝にそのスライドを通す。
「よし、これでしっくりいった」
「『しっくり』って、何ですか?」
「ほら、こうして動かせるけど、下に向けても落ちないでしょう。
これが『しっくり』ということです」
「なるほど。じゃ、それ貸してくださいよ」
我々は、職人が削ったスライドと溝の隙間を計測した。3ミクロンである。
「じゃ、『しっくり』って3ミクロンなんですね」
こうして熟練の暗黙知は、少しずつ形式知へと知の形を変えていった。
『神業』はマニュアルとなり、技能は再現性のある技術に置き換えられた。
金型研究を開発して二年半がたったある日、
何の経験もない19歳の社員がそのマニュアルに従って実際に金型を作った。
すると、この道一筋の熟練工と同じ金型を、19歳の若者が作れてしまった。
本当に同じものができた。
「もうこれ以上、恥をかかせないでよ」
という言葉を最後に、熟練工はインクスを去った


金型製造の全工程で熟練者の判断が本当に必要な工程は10%だそうです。

インクスの会社説明会で、山田社長からこのエソードを直接聞いた私は

「つまり、どんなに突き詰めても熟練工の判断が10%は必要ということですね?」

と質問しました。

山田社長は意味ありげに含み笑いを浮かべ、こう言いました。

「10%は熟練工のプライドだ。
100%自動化できると言いきってしまったら、その職人の人生を否定してしまうことになるだろう?」


あのときの山田社長の言葉を、私は忘れることはないでしょう。

インクスのモットーは「目標は意思である」だそうです。

『神業』と呼ばれるブラックボックスを開けなければ、それを超えることはできない

技術に対して恐ろしいほど貪欲に、知識創造のプロセスを行っていく




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99%自動化したとして、残り1%の手作業の中に、依然として10%の熟練の技が残ると思う。
それは設計であったり、検査であったり機械修理であったり、見積もりだったりするかもしれないけれど、残ると思う。

限りなくゼロに近い1%

わけのわからないSUBJECTでスミマセン(笑)
実際に熟練の技を見たこともないのにエラそうなことを語りましたが、私はインクスの山田社長の思想には共感しています。
人間が再現できる行動ならば、徹底的に客観視すれば、すべて自動化できると思います。

(意匠設計でない)設計や検査、修理でも人間が「ある思考プロセス」に基いて行動している限り、それは形式知にすることが可能であるというのがインクス流です。
芸術や意匠設計のようにインスピレーションで創造するものは別として、ですが・・・

ただし、実際には費用対効果でメリットがなければ自動化する意味はありませんね。

私がこのブログで一番伝えたいことは、熟練の技を「消す」のではなく「超える」ということです。
伝統として残すべき技能はあります。
しかし、伝承するだけでは技術は進歩しないと思います。

熟練の技を必要とする部分を限りなくゼロに近づける→
すると新しい技術が生まれる、新しい熟練の技が生まれる→
熟練の技を必要とする部分を限りなくゼロに近づける→
・・・
このように「技術を追求し続ける!」という意思を山田社長のコメントから感じました。

「できるはずがない」といって思考を停止してしまったら、進歩もそこで止まってしまいます。
私は自己の創造的破壊を繰り返し続けたいと思いました。

「アキレスと亀」のような話ですけど(笑)

貴重なコメントありがとうございました。
プロフィール

KOU.

  • Author:KOU.
  • 1981年生
    高等専門学校、大学院にて機械力学・制御工学を基礎とした振動制御に関する研究を行う。

    2006年
    某人材紹介会社入社
    エンジニアの転職サポートを志し、人事から求人ニーズをヒアリングする企業担当を経験。
    自動車、家電、半導体、精密・計測器、化学業界、総合商社など各企業の人事から採用ニーズを直接伺ってきた経験を活かし、第二新卒からエグゼクティブ層まで、これまでに1000人以上のビジネスパーソンに対してキャリアカウンセリングを行っている。

    [KeyWord]
    人材ビジネス/人材紹介/経営/人材開発/組織論/人事/CHO/HR/キャリアディベロップメント/カウンセリング/コーチング/MBA/MOT/技術経営
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